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センサコラム「計装2005年10月号」Vol.01

MEMS 応用によるプロセスガスクロマトグラフ
ガスクロマトグラフにマイクロ・エレクトロメカニカルシステムを応用(上)

ノーケン 倉本 拓司

ガスクロマトグラフは、プロセス制御における極めて重要なガス成分分析計であり、ユーザからの技術改良の要求は高く、SIEMENS社では、新型プロセスガスクロマトグラフの開発に際して、マイクロ・エレクトロメカニカルシステム(MEMS)を応用し、その製品を2004年初めに販売開始した。本稿は、その技術について詳述すると共に、今後の更なる可能性と応用性について解説し、その周辺技術や顧客の受ける利点や経済性に関しても言及した。

1.はじめに

 プロセスガスクロマトグラフィは、プロセス制御の最も重要な分析手法の一つであり、過去40年間の歴史の中で次第に完成化されてきた。複雑で高価な製品ではあるが、現在では様々な石油精製、石油化学、化学、鉄鋼等の工業プロセスにて、高機能なシステムとして利用されている。

 しかし一方、設備の投資額や運転経費の増大によりプロセス制御の分析手法の見直しが始まっており、特に、物理学的な原理上の優位点であるセレクティビティ、センシティビティや精度など、高級なガスクロマトグラフのもつ能力のすべてをそれぞれの工業プロセスで必要とはされていないのが実情である。

 複雑さすなわち製品コストを減じること、ミニチュア化と堅牢性により据付に係わる建設コストを押さえること、基本的優位性を失うことなく幅広く遠隔操作と調整ができることなどはほぼすべてのユーザが期待するところであり、これらが満足できれば、ガスクロマトグラフの新しい方向性への主なる障害はすでになくなったと考えて差し障りない。

 これらを実現することを目的として、コスト低減や分析スピードの高速化と分析の信頼性向上を達成する、新しい形の新型ガスクロマトグラフをSIEMENS社では開発着手し、製品を完成した。以下に詳細について紹介する。

2.原理

 ガスクロマトグラフィは分析手法のひとつであり、図―1にガス分離の原理を示す。ラウールの法則(混合溶液の各成分の蒸気圧はそれぞれの純粋溶液の蒸気圧と混合溶液中のモル分率の積で表される)に従い、気液2相間の分子溶解平衡を基本原理としている。

 他の分析手法と異なり、明確に定義づけされた分子固有の物理定数は直接的には利用されていない。

 各分子はその分子特性に対応する異なった平衡状態を持つと考えられ、ガス分子の一定割合が液相に溶解しそして残りのガス分子は気相に残り、平衡状態が作り出される。濃度が低い範囲内では、この平衡状態は、一次近似ではガス濃度に関係せず、また他の分子の存在の影響も受けない。他方、システムの温度や液体のタイプによって大きな影響を受ける。

図1 ラウールの法則:ガス流れを停止させた状態のシステム

図2 ガス流れ状態のシステム化(モデル化)

 図2にカラム内の現象をモデル化した。

 パイプの内壁に静止液相フィルムがあり、パイプの気相内に存在するすべてのガス分子は輸送ガスにより流されていくが、液相フィルム内に溶解したガス分子は残留することになる。 つまり流れているガス分子は液相内のパートナを失い、液相に残された溶解した分子も気相内のパートナを失うことになり、溶解平衡がくずれる。このとき、液相・気相どちらのポイントにおいても新しい溶解平衡がただちに形成される。つまり図―2で模式的に示したピークの前半では気相内のガス分子は比例的に液相に溶解し、そこに留まり、ピークの後半では溶解分子が液相から浮かび出し、そして流れて行く。

 それゆえ、パイプ気相内において、それぞれのガス分子は、溶解平衡に対応するそれぞれ異なった移動スピードを持つことになる。 つまり、それぞれのガス分子はパイプ内で固有のスピードで移動することとなり、ガス分子の分離がなされる。

 パイプはカラム、輸送ガスはキャリアガスそして液状フィルムは固定相と読み替えることが出来る。

 固定相として液体の代わりに細孔のある材料が用いられることもある。

 規定量のサンプルをカラムに注入しなければならないので、この分析方法は非連続となる。 ガスにとどまらず、エバポレータを通して供給される液体も分離できる。

  分離後、それぞれの分子情報は適切な検出器にて測定され、分子のリテンションタイムは定性的情報を、ピークは定量的情報をそれぞれ提供する。しかしこれらの情報だけでは必要なデータは出てこないので、既知の混合ガスとの比較が必要となる。この比較は連続して行われるので、運転条件は常に一定であることが必要となる。カラムシステムの固定相と温度に加え、サンプル注入量、キャリアガス速度、キャリアガス純度、化学反応性などの影響など、様々な変数を綿密に検討しコントロールする必要がある。

 複数成分の混合ガスにおいて、それぞれの成分あるいは成分グループを最適なカラムシステムに供給できることも重要である。 また測定が不要な成分、あるいはカラムに有害な成分をカラムの系外に排出することもカラムシステムの重要な設計ポイントになる。



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