
ノーケン 倉本 拓司
(10月号より続く)
図7は、検出器Micro TCD(1から5)がインラインに並べられていることを示しており、従来知られていなかった新しい可能性を提供し、なかんずく、プロセスガスクロマトグラフのひとつの基本的問題を解決することができる。
最初に述べた通り、クロマトグラフィは比較法のひとつであり、実際に運用する際、分析上のエラーはチェッキングプロセス(再校正もしくは実験室でのチェック測定)を用いてのみ認識される。 特に、プロセスに起因すると考えられる測定値の変動が発生していても、もし何らかのプロセス上の故障が原因であれば、その測定値の誤差原因を分析計として正しく認識することは不可能である。
ラボ用のクロマトグラフは、サンプルガスに内部基準物質の正確な量を加えることで、この問題点は解決される。 但し必要条件として、サンプルにはじめからその物質が存在しないこと、そしてクロマトグラフに用いられるカラムデザインにより他の成分から完全に分離することが必要である。
サンプルが連続流であると、サイクリックプロセスであるプロセスガスクロマトグラフに、内部基準物質を自動的に追加することによって予想されるエラーは、分析エラーより大きいので、これを実施することはこれまで不可能とされた。 しかしながら、インライン検出器を開発することによりこれを可能とした。 インライン検出器を使用することで、高沸点成分の測定における問題も解決した。 カラムの長さは、最も分離が困難である2物質を分離できる性能により決まる。 プロセスガスクロマトグラフにとって一般的であるアイソサーマルモードでは、非常に長いカラムシステムを使用するので、通過するのに長い時間を要していた。ラボ用のクロマトグラフであれば、確立された手法である「温度プログラム」が用いられ、高沸点成分の分離を行うことが出来るが、温度のリニアな上昇は、高沸点成分に必要ない分離性能の低下を引き起こすことが分かっており、プロセスガスクロマトグラフでは効果的な方法ではない。 また、サイクリックモードの限界として、分離に要する時間を節約するために温度プログラムを使っても、結果的には、冷却に必要な時間でその効果は打ち消されてしまうのが常である。

図7 マインライン検出法の全システム構成
この問題はインライン検出器を採用することで解決した。 検出器は高沸点成分の分離に必要な長さを有するカラムの後ろに設置される。 分離がより困難な成分は全部のカラムシステムを通し、分離が易しい高沸点成分はその一部のみを通す。 注目成分がカラムシステムのどこまでを通過するかはもはや重要ではなく、如何に、注目成分の測定をした後にガスをライブスイッチでカットしてしまうか、注目外の高沸点物質とともにバックフラッシュするかということが重要である。
ガスクロマトグラフの機能として、同一成分を複数回測定することが可能であり、またこれは必要なことである。すなわち、得られた追加情報は、内部基準が無くてもベリフィケーションの有効なツールとして使うことが可能となる。
開発の段階で検討の対象となったのは、より高速の分析を行うか、もしくは、より高精度な分析(正確な結果)を行うかという選択であったが、まだ完全な解が得られたわけではない。
短いカラムの後ろに検出器を設置すれば、ほとんどの成分で完全な分離は行われない。しかし、このわずかに分離されたピークのグループは、数学的に処理することができる。 もちろん、分離の度合いによっては大きなエラーが予測される。 数学的結果は、完全な分離により得られた正確な結果と比較される。 多数のサイクルを実行することで、ソフトウエアパラメータの自己最適化により数学的分析の欠点を少なくできる。
プロセス内に重大な状況が発生した場合には、精度よりも速度がより重要である。MicroSAMTMは、 システムの自己診断機能のひとつとして、それぞれの測定成分において濃度の大きな変化があるとこれを認識し、数学的結果の数値のみを採用する機能がある。 この時、サイクルタイムは自動的に短くされ、完全な分離はある期間省略される。 数値が安定してくると、完全な結果を得る通常のモードに戻る。
数学的なピーク分析のアイデアは新しいものではなく、何度もトライされた技術である。しかしながらこれまでは成功していない。それは、この技術が単純に分離にとって代わるものでもなく、正確な測定を保証するものではないからである。 しかし、数学的ピーク分析は上述のように補助的機能としては確かに有効であることが実証できた。