
ノーケン 倉本 拓司
ディーゼルエンジンから排出される燃焼排ガスにはパーティキュレート、C02、C0、SOX,NOXなどが含まれており、それらは環境負荷を増加させている。それらの排出物質を制御するため、いろいろな対策がなされているが,NOX削減の有効な方法として、尿素SCR(選択還元触媒)があり,今後NOX削減の主流となっていくとみられている。 尿素SCRは,ディーゼルエンジン排ガス中に尿素水を添加し、それによって生成されるアンモニアによってNOXを還元する装置である。
この装置により、NOXはアンモニアと反応してN2とH20に還元され,環境負荷のない物質として排出される。しかし、SCRが劣化した場合やエンジンが冷えた状態では、排ガス中に添加された尿素(アンモニア)がNOX還元に有効に使用されず,SCR下流に配置されたアンモニア分解用触媒での処理限界を超え、アンモニアスリップとして排ガスと共に大気中に放出される。アンモニアはもともとディーゼルエンジンの排ガスには含まれていなかった物質であるため,アンモニアの排出は新たな環境負荷を増やすこととなる。 このため,アンモニア排出量が十分に低いレベルに維持できるよう、さまざまな条件下において尿素SCRの機能評価を行う必要がある。
尿素SCRの評価を行うにあたってば,排ガス中のアンモニア分析が重要事項となるが、アンモニアは反応性が高く、またアンモニア白身やその反応生成物がサンプル採取管内部に付着する可能性があるため、サンプリング方式によるアンモニア分析の場合は,サンプル採取管を加熱するなどの措置が必要となる。また,車軟ディーゼルエンジンは,運転条件が比較的安定しているプロセス設備とは異なり、その排ガスの流量,組成,温度,圧力が,エンジン負荷、回転数などの状況により瞬時に大きく変動する。 こうしたことから,アンモニア分析に使用する分析計には,運転条件の変化に対応できるより速い追従性および,より正確な測定のためのサンプリング装置が要求される。 これらの要求事項に対応できるアンモニア分析計として,Siemens製レーザ式分析計「LDS6」が尿素SCRの排ガス中のアンモニア濃度測定に使用されている(図1参照)。

図1 ディーゼルエンジン尿素SCR ブロック図
このLDS6は,サンプルポイントにて直接測定を行うin-situ*1)タイプの分析計であり、サンプルガスを分析計に引き込むことなく,直接排気管内の排気ガス中のアンモニア濃度の測定が可能である。サンプリング装置による測定の遅れがないため,ガス条件の変化に対して速い追従性を実現することができる。また、直接アンモニア濃度を測定しているため、アンモニア以外のガス濃度が変化した場合においても安定した測定が可能である。
次項以降に、LDS6の概要,測定原理および特長を紹介する。
*1)in-situ :「本来の場所で」という意味を表すラテン語